ブログ記事

ブログ

 我々の向かうところ(2)



昨日の現場のこと。
すぐ近くで水道工事をしているらしい「以前のお得意さん」が私の前を通った。
「おお、隼人じゃないか。元気かよ」
久しぶりだというのに、しかし挨拶もそこそこに彼の話は私への勧誘に変わった。
「隼人、まだカラダ動くだろ?ドカタやらないか?」
この歳から肉体労働デビューは無理ですよ、と私が笑うと、いやいや出来るって!と彼は返す。まあ本気で私が転職するとは思ってない口ぶりでもあって、どちらかといえば会う人会う人にその言葉を投げかけている作業的な感じだ。

__________

警備業界の人材難、ではない。
そもそもで社会に人が足りてないのだ。
コンビニも人材難、宅配業者も人材難、牛丼チェーンだって同じこと。ドカタもそうだ。

もし、ある企業がギャラアップで大量に若い働き手を獲得したら、どうなるだろう。
一企業では社会に大した影響はないかも知れない。では日本全体、ある程度の割合の企業がこれをしたらどうだろうか。
当然のこと、他企業は以前にも増して人材難だ。とは言えくたびれてしまうのが嫌なら競うしかない。

競えばどうか。先にギャラアップで若い働き手を掻き集めたはずの企業たちがリードを失う。同じリードを得たければまたギャラアップをすることになる。これはつまり虚しい無限競争の始まりだ。社会が疲れていくだけで何も解決しないだろう(ギャラアップが単に企業内節約の賜物であればそこに限界はあるが商品売値アップに頼れば話は変わってくる)。

足りていないものを奪い合うのだから簡単な話だ。



__________

シェアリングと呼べばいいだろうか。
業種によって差異はあろうが、ある程度の「若くて有能なスタッフ」を得たら、残りは日本語勉強中の外国人やセカンドライフの高齢者、そうでなくとも「あまり能力の高くない」人々などを、すなわちまだ枯渇していない層を受け入れていく、これが現代日本の唯一残された道と私は考えていて、これが社会に対する企業の誠意とさえ思っている。

関しては「そのような社内環境で労働力が疲弊しないシステム」を各々構築していく必要があるという事にも言及せねばならない。
これはおそらく簡単ではなくて、この国の企業が過去に経験していないミッションかも知れない。しかしおそらく最も重要なミッションだ。

__________

若い女性ばかりが働いているイメージのコーヒーショップ。
そこで少し腰の曲がった高齢男性がレジに立ち注文を聞いていた。
24時間混雑する新宿駅近くでは牛丼店がセルフサービスをシステムに盛り込んで、1名の日本人スタッフと1名の外国人スタッフで営業している。

我が業界はどうするべきだろう。
いま言えることは、求職者にとっての魅力において多くの業者がまだ他業種に負けていることだ。
しかしただ「勝利」を求めればそれでよいのか。上述の通り、負けている側の方針も問われる時代なのではなかろうかと私は考えている。もちろん、既に勝っている側の方針も問われるのだが。


2020/2/4


ブログ